スポーツ整形外科とは?
骨や関節・筋肉などが成長途中の子供は、スポーツを頑張りすぎるとスポーツによる「障害」が起きてきます。そのためにスポーツを断念する事がないように、早期に正しい診断と治療が大切です。地域の育成年代、スポーツ愛好家に、治療だけに限らず、地域スポーツ活動を応援したいと考えています。
上肢 Q&A
起こしている場合があります。
今回のような怪我の仕方では、一番多いのは人差し指のDIP関節(一番指先の関節)の剥離骨折や腱の断裂が考えられます。診断はレントゲン検査を行い骨折の有無(骨折の骨片の大きい場合、脱臼の有無も)を確認します。
治療には2通りのやり方があります。
一つは、ギプスや装具で固定するやり方です。骨片の大きさが小さい場合や伸筋腱のみの損傷の場合、数週間以上の固定で治療します。しかし、骨片が大きい場合や、脱臼を伴っている時は手術で骨片を固定する必要があります。
「つき指」という事で怪我をしてから、数週間(たまに1か月以上)経過してからの治療では、治療の効果が一番あがる時期を逃してしまいます。怪我の治療で最も大切なことは、早期診断と適切な治療です。いつもの「つき指」より痛い時は、注意が必要です。
A2.スポーツをしていて、バランスをくずして手をつく事はよくあります。そのような場合、さまざまな怪我をする場合があります。
今回のように最初のレントゲン検査で骨折はないようだが・・と言われて受診した場合、普通のレントゲン検査では写らない骨折を探すのに、同じ手首を角度を変えて撮影します。
手首は、橈骨、尺骨、手根骨からできていますが、通常の撮影で見逃しやすい骨折の起り易い場所だからです。
今回は、舟状骨骨折が起きていました。症状の特徴は、親指の付け根の圧痛(腫脹を伴う事も多い)です。この骨折はレントゲン検査だけでは診断のつかない時もあり、見逃されやすい骨折の代表の一つです。スポーツ整形では、そのような場合、MRI検査を行う事が大切と考えています。
治療は骨折の程度にもよりますが、基本はギプスによる固定です。ただし、人体の骨折の中で、骨折の治りにくい部位の上位3か所をあげた場合、その一か所に必ず挙がるのが舟状骨骨折です。そのためギプスの固定期間は、1~2か月以上の場合もあります。骨折が大きくずれている場合は、最初から手術をする場合もあります。
今回のように受傷後早く、病院でギプスをすることができた場合は問題がないのですが、病院に受診するのが遅れて、骨折が治らないまま経過している場合があります。そのような骨折の状態を骨癒合不全(偽関節)と呼びます。その場合、手術は単純なスクリュウー固定だけでなく、骨移植術の併用が必要になる場合があります。
ギプスをした状態でも下半身のトレーニングはできますから、安心してください。
A3.鎖骨骨折は、腕を伸ばしたまま倒れたり、肩を下にして落ちたりして起こりやすい骨折です。骨折部位は、鎖骨の中央が80%と言われています。この骨折の起こしやすいスポーツは転倒しやすい競技で、柔道、サッカー、ラグビーなどです。
治療はほとんどの場合、鎖骨のバンド固定で行います。ただし、プロスポーツ選手など競技復帰を急ぐ場合に手術を希望される方がいます。もちろん、骨折のずれが大きい場合や、神経血管の異常な症状が出ている場合も手術が必要な場合があります。ただし、バンド固定で骨折部の良好な整復位が得られた場合は、約一か月程度で新しい骨ができ始めます。スポーツ復帰は競技によって違いますが、レントゲンを撮りながら判断します。柔道やサッカーのようなコンタクトプレーは、段階的に復帰するようにします。
鎖骨骨折自体は、骨折部に変形が残す事もありますが、肩の関節等に機能障害を残すことはありませんから、治りやすい骨折の一つなので、あまり心配しなくていいでしょう。
A4.左肩の外側にある鎖骨端の圧痛と上方への突出がみられました。この時点で、左の肩鎖関節脱臼の診断がつきます。レントゲン検査で左右の肩鎖関節を比較すると、脱臼(亜脱臼も含め)の度合がはっきりとします。
肩鎖関節の脱臼は柔道、ラグビー、サッカーなどのコンタクトスポーツに多くみられます。治療法は、脱臼の度合いにより変わりますが、おもりを使ったストレスレントゲン撮影により正確に診断します。肩鎖関節の損傷の程度が、亜脱臼程度までなら痛みに対する治療と三角巾の使用を行います。痛みが引いてくれば数週間でスポーツ復帰も可能です。完全な脱臼を伴う場合は、手術をするかしないかについては、まだ整形外科専門医でも統一した見解はありません。手術をする方法として、金属でとめる方法、靱帯を縫合したり、移植したりする方法、それらを組み合わせた方法とさまざまです。言い換えれば、これが一番という方法はないという事です。ただし、脱臼を手術しない方法でも、変形は残りますが機能上の障害はなく、長期的に見てあまり差が認められないという考えもあります。手術が必要かどうかは、スポーツの種目、本人の競技レベルにより考えたほうがいい場合もありますが、十分な説明を受けてから考えてもいい事だと思います。
A5.テニス、バトミントン、卓球などラケットと使う競技をしている方なら、テニス肘という言葉を一度は聞いたことがあると思います。医学用語では、上腕骨外上顆炎と呼びます。 手首をそらす筋肉が肘の外側から伸びていて、バックハンドで打つ時に傷めやすいと考えられています。ただ実際には、家事(掃除や料理など)で手を使うことの多い主婦にも多くみられます。
原因としては、手首をそらす筋肉の上腕骨への付着部の断裂や骨膜の炎症が考えられます。いわゆる使い痛みの一種ですが、痛みが強くなるとスポーツをしている時だけでなく、日常生活で物を持ち上げたり、タオルを絞ったりするのも不自由になります。早期の場合、レントゲンで異常はないことが多いですが、慢性化している場合は石灰化などの変化が認められることがあります。
治療としては、痛みを和らげ治療機関の短縮のためのリハビリテーション、肘のサポーター、外用薬を組み合わせます。競技復帰に向けてストレッチも大切ですが、痛みが強い時は無理をしないようにします。スポーツ復帰後に大切な事は、再発予防ですが、筋力強化を含めた運動療法や練習後のアイシングなどがポイントと考えています。
体幹 Q&A
A1.スポーツ障害に伴う腰椎椎間板ヘルニアは、過剰な腰への負担で椎間板が損傷して後ろの方に飛び出して、足にいっている神経を圧迫することで起きます。症状は安静時の腰痛、運動時の痛みと運動制限、足のしびれなどです。進行すると足の感覚が鈍くなったり、力が入らなくなったりします。
検査にはレントゲンでは椎間板は写りませんが骨の形で判断したり、MRIという磁石を使った検査をしたりもします。
治療には、電気治療、理学療法士による運動療法、コルセットなどがあります。痛みが強い時期にブロック注射(もちろん本人に相談してから・・)を行う事もあります。
腰痛の原因はヘルニアだけでなく、腰椎分離症(疲労骨折という腰のスポーツ障害です)など様々な原因が考えられます。痛みを繰り返して慢性化する前に早期診断、早期治療が大切と考えています。
下肢 Q&A
A1 この生徒は、病院に来院時にはお皿の骨(膝蓋骨)は自然に元の位置に戻っていましたが、膝が腫れていて膝関節の中に血がたまっていました。
診断は膝蓋骨脱臼です。レントゲン写真などで骨折の合併を確認しておく必要があります。初回脱臼なら整復位でのギプス固定を行いますが、繰り返す脱臼の場合は、手術を含めた治療方針を考えることもあります。
A2.成長期の骨には、成長軟骨という柔らかい部分があります。お皿(膝蓋骨)の下の部分には脛骨結節という成長軟骨があります。発育期の少年少女が激しい運動を続けると、この部分の軟骨に過剰なストレスが生じて痛みが生じてきます。一般にオスグット・シュラッター病(オスグット病)と呼んでいます。片側だけの場合もありますが、左右同時に起こる事や、時をずらして左右に起こる事も多いです。
スポーツの種目では、跳躍や疾走の多い陸上競技、サッカー、バスケットボールなどによく見られます。症状は、膝蓋腱の付着部である脛骨結節(お皿の少し下)の腫れ、圧痛、膝を曲げた時の痛みです。
急に起こった場合でも数週間、慢性的に痛みが続いている場合は、数か月の練習量の制限が必要です。ただし、上半身のトレーニングは可能です。治療としては、湿布なども使いますが、治療期間の短縮のためにはリハビリテーションが重要です。電気と使った治療や、理学療法士の指導で各個人の状態に合わせた、ストレッチや運動療法の指導を行います。一度生じてしまった脛骨結節の隆起(でっぱり)は、そのまま残る事が多いですが、競技復帰のためには痛みをしっかりとる事が重要です。
A3.太ももの裏の筋肉(ハムストリング)の肉離れです。肉離れの部位で多いのはハムストリング、大腿四頭筋、腓腹筋(ふくらはぎ)などです。
肉離れは筋肉の断裂で、軽いものから重いものまであります。軽度なら電気治療等で1週間で復帰できます。中等度なら復帰前に運動療法を始め3~4週間で復帰でしょう。重度の場合、手術が必要な事もあり注意が必要です。復帰も2カ月以上かかる事もあります。
中等度から重度の肉離れは、スポーツ選手のパフォーマンス(走力、バランス感覚など)を落とす可能性があります。時々、けがをしてすぐにマッサージを受ける方がいますが、腫れと内出血をひどくするのでやってはいけません。スポーツ復帰の時期(練習メニューも含めて)については、スポーツ医、理学療法士など専門家に相談する事も大切です。
A4.アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉を踵(かかと)の骨につなげています。アキレス腱の痛みの原因にもいろいろありますが、この場合はアキレス腱周囲炎が考えられます。
アキレス腱周囲炎とは、アキレス腱を包んでいる膜(パラテノン)の炎症です。原因としては運動量の増加、新しい練習メニューなどが多いです。スポーツの種目としては、陸上競技の長距離ランナー、サッカー、バスケットボールなど様々です。
症状はアキレス腱の腫れ痛み、ストレッチなど動かした時の痛み、ギシギシ音などです。
治療には、電気治療、理学療法士による運動療法が必要になる場合もあります。
初めての痛みなら2~3週間で復帰できますが、なんども繰り返す痛みが出ている場合は、インソール(足底板)が必要になる事もあります。
手術はあまり一般的ではないですが、繰り返す痛みの場合、前述のパラテノンを切除する手術もあります。ただ、そのような事にならないように早期診断が大切でしょう。
A5.外反母趾は、スポーツ整形外科よりは、成人女性によくみられます。スポーツの種目ではクラッシックバレエ、バトミントンなどでみられます。
診断は見た目だけでなく、レントゲン検査を行い骨の変形の程度の確認(関節の変化など)、足の裏側の種子骨の位置、疲労骨折の有無などを確認します。
治療は、靴の確認をし足に合っている確かめます。電気治療、理学療法士による運動療法、インソール(足底板)が必要になる事もあります。
成人で足趾の変形が強く、日常生活に不自由を感じるほどの痛みがある時は手術も考えます。実際には痛みの軽いうちに治療を始めれば、手術になる事は少ないと考えています。