スポーツ整形外科とは?

骨や関節・筋肉などが成長途中の子供は、スポーツを頑張りすぎるとスポーツによる「障害」が起きてきます。そのためにスポーツを断念する事がないように、早期に正しい診断と治療が大切です。地域の育成年代、スポーツ愛好家に、治療だけに限らず、地域スポーツ活動を応援したいと考えています。

 

Q&A上肢

Q1.バスケットボール部の中学2年男子です。練習中にボールで右人差し指をはじいてから、指先の関節がしっかりと伸びません。

A1.ボールを使った球技では、一般的な「つき指」をする事が多いですが、怪我をして腫れや痛みが強く、今回のように関節の動きに制限がある場合は、骨折や脱臼(靱帯損傷、伸筋腱の断裂の合併も含む)を起こしている場合があります。
 今回のような怪我の仕方では、一番多いのは人差し指のDIP関節(一番指先の関節)の剥離骨折や腱の断裂が考えられます。診断はレントゲン検査を行い骨折の有無(骨折の骨片の大きい場合、脱臼の有無も)を確認します。

 治療には2通りのやり方があります。
 一つは、ギプスや装具で固定するやり方です。骨片の大きさが小さい場合や伸筋腱のみの損傷の場合、数週間以上の固定で治療します。しかし、骨片が大きい場合や、脱臼を伴っている時は手術で骨片を固定する必要があります。

 「つき指」という事で怪我をしてから、数週間(たまに1か月以上)経過してからの治療では、治療の効果が一番あがる時期を逃してしまいます。怪我の治療で最も大切なことは、早期診断と適切な治療です。いつもの「つき指」より痛い時は、注意が必要です。


Q2.バレーボール部の中学3年女子です。レシーブの後にバランスを崩して左手をついてから、左の手首が痛くなりました。最初の病院ではレントゲン検査で、骨折が写っていないので捻挫という事でした。1週間経っても痛みが引かないので受診しました。

A2.スポーツをしていて、バランスをくずして手をつく事はよくあります。そのような場合、さまざまな怪我をする場合があります。
 今回のように最初のレントゲン検査で骨折はないようだが・・と言われて受診した場合、普通のレントゲン検査では写らない骨折を探すのに、同じ手首を角度を変えて撮影します。
手首は、橈骨、尺骨、手根骨からできていますが、通常の撮影で見逃しやすい骨折の起り易い場所だからです。

 今回は、舟状骨骨折が起きていました。症状の特徴は、親指の付け根の圧痛(腫脹を伴う事も多い)です。この骨折はレントゲン検査だけでは診断のつかない時もあり、見逃されやすい骨折の代表の一つです。スポーツ整形では、そのような場合、MRI検査を行う事が大切と考えています。

 治療は骨折の程度にもよりますが、基本はギプスによる固定です。ただし、人体の骨折の中で、骨折の治りにくい部位の上位3か所をあげた場合、その一か所に必ず挙がるのが舟状骨骨折です。そのためギプスの固定期間は、1~2か月以上の場合もあります。骨折が大きくずれている場合は、最初から手術をする場合もあります。
 今回のように受傷後早く、病院でギプスをすることができた場合は問題がないのですが、病院に受診するのが遅れて、骨折が治らないまま経過している場合があります。そのような骨折の状態を骨癒合不全(偽関節)と呼びます。その場合、手術は単純なスクリュウー固定だけでなく、骨移植術の併用が必要になる場合があります。
 ギプスをした状態でも下半身のトレーニングはできますから、安心してください。


Q3.柔道部の中学2年の男子です。試合中に体落としで投げられた時に、受け身をとりそこなって怪我をしました。病院で鎖骨骨折と言われてバンドで固定しました。レントゲン検査で骨折のずれが大きいと言われたので心配です。

A3.鎖骨骨折は、腕を伸ばしたまま倒れたり、肩を下にして落ちたりして起こりやすい骨折です。骨折部位は、鎖骨の中央が80%と言われています。この骨折の起こしやすいスポーツは転倒しやすい競技で、柔道、サッカー、ラグビーなどです。

 治療はほとんどの場合、鎖骨のバンド固定で行います。ただし、プロスポーツ選手など競技復帰を急ぐ場合に手術を希望される方がいます。もちろん、骨折のずれが大きい場合や、神経血管の異常な症状が出ている場合も手術が必要な場合があります。ただし、バンド固定で骨折部の良好な整復位が得られた場合は、約一か月程度で新しい骨ができ始めます。スポーツ復帰は競技によって違いますが、レントゲンを撮りながら判断します。柔道やサッカーのようなコンタクトプレーは、段階的に復帰するようにします。

鎖骨骨折自体は、骨折部に変形が残す事もありますが、肩の関節等に機能障害を残すことはありませんから、治りやすい骨折の一つなので、あまり心配しなくていいでしょう。


Q4.テニス部の高校1年の女子です。練習中に転んで左肩を打ちました。肩の外側の部分の骨が痛くて、右と比べて出っ張っています。

A4.左肩の外側にある鎖骨端の圧痛と上方への突出がみられました。この時点で、左の肩鎖関節脱臼の診断がつきます。レントゲン検査で左右の肩鎖関節を比較すると、脱臼(亜脱臼も含め)の度合がはっきりとします。

 肩鎖関節の脱臼は柔道、ラグビー、サッカーなどのコンタクトスポーツに多くみられます。治療法は、脱臼の度合いにより変わりますが、おもりを使ったストレスレントゲン撮影により正確に診断します。肩鎖関節の損傷の程度が、亜脱臼程度までなら痛みに対する治療と三角巾の使用を行います。痛みが引いてくれば数週間でスポーツ復帰も可能です。完全な脱臼を伴う場合は、手術をするかしないかについては、まだ整形外科専門医でも統一した見解はありません。手術をする方法として、金属でとめる方法、靱帯を縫合したり、移植したりする方法、それらを組み合わせた方法とさまざまです。言い換えれば、これが一番という方法はないという事です。ただし、脱臼を手術しない方法でも、変形は残りますが機能上の障害はなく、長期的に見てあまり差が認められないという考えもあります。手術が必要かどうかは、スポーツの種目、本人の競技レベルにより考えたほうがいい場合もありますが、十分な説明を受けてから考えてもいい事だと思います。


Q5.軟式テニス部の中学1年女子です。3週間前からラケットでボールを打つ時に肘が痛くなります。来月に試合があって、先月から練習時間が増えていました。

A5.テニス、バトミントン、卓球などラケットと使う競技をしている方なら、テニス肘という言葉を一度は聞いたことがあると思います。医学用語では、上腕骨外上顆炎と呼びます。 手首をそらす筋肉が肘の外側から伸びていて、バックハンドで打つ時に傷めやすいと考えられています。ただ実際には、家事(掃除や料理など)で手を使うことの多い主婦にも多くみられます。

 原因としては、手首をそらす筋肉の上腕骨への付着部の断裂や骨膜の炎症が考えられます。いわゆる使い痛みの一種ですが、痛みが強くなるとスポーツをしている時だけでなく、日常生活で物を持ち上げたり、タオルを絞ったりするのも不自由になります。早期の場合、レントゲンで異常はないことが多いですが、慢性化している場合は石灰化などの変化が認められることがあります。

 治療としては、痛みを和らげ治療機関の短縮のためのリハビリテーション、肘のサポーター、外用薬を組み合わせます。競技復帰に向けてストレッチも大切ですが、痛みが強い時は無理をしないようにします。スポーツ復帰後に大切な事は、再発予防ですが、筋力強化を含めた運動療法や練習後のアイシングなどがポイントと考えています。
 

Q&A下肢

Q1.バスケ部の中学1年女子です。試合中に方向転換した時に左膝のお皿が外れたような音がしました。

Q2.サッカー部の中学1年男子です。小学校6年生の頃から時々、両膝のお皿の下のあたりが痛くなっていたけど、自然に治っていました。今回は、1ヶ月前から痛みが強くなり、軽く走っても痛みが出ます。

A2.成長期の骨には、成長軟骨という柔らかい部分があります。お皿(膝蓋骨)の下の部分には脛骨結節という成長軟骨があります。発育期の少年少女が激しい運動を続けると、この部分の軟骨に過剰なストレスが生じて痛みが生じてきます。一般にオスグット・シュラッター病(オスグット病)と呼んでいます。片側だけの場合もありますが、左右同時に起こる事や、時をずらして左右に起こる事も多いです。
 スポーツの種目では、跳躍や疾走の多い陸上競技、サッカー、バスケットボールなどによく見られます。症状は、膝蓋腱の付着部である脛骨結節(お皿の少し下)の腫れ、圧痛、膝を曲げた時の痛みです。
 急に起こった場合でも数週間、慢性的に痛みが続いている場合は、数か月の練習量の制限が必要です。ただし、上半身のトレーニングは可能です。治療としては、湿布なども使いますが、治療期間の短縮のためにはリハビリテーションが重要です。電気と使った治療や、理学療法士の指導で各個人の状態に合わせた、ストレッチや運動療法の指導を行います。一度生じてしまった脛骨結節の隆起(でっぱり)は、そのまま残る事が多いですが、競技復帰のためには痛みをしっかりとる事が重要です。

Q3.野球部の中学3年の男子です。走塁のときベースで右の足首をねじって捻挫しました。捻挫をしたのは、今回が初めてですが、ゴキッと音がしてひどく腫れています。

A3.スポーツを続けていて、一度も捻挫をしたことがない人はあまりいないかもしれません。足首